京都・淀| 夢は海外出店!師匠の味を受け継ぐ「亀屋幸永」の本わらび餅

京阪淀駅前にオープンした「亀屋幸永」

2024年2月にオープンした、和三盆入りの本わらび餅専門店「亀屋幸永(かめやさちなが)」。

長年、京都のアパレル会社で秘書として働いていた店主の木戸幸世さんは、退職後、子育てに専念しながら次なる自分の道を模索していました。

そんな幸世さんが本わらび餅の世界に飛び込むきっかけになったのは、京都市上京区の和菓子店「亀屋博永(かめやひろなが)」の本わらび餅との出会いです。

目次

おいしいわらび餅がつくりたい

「亀屋幸永」を営む木戸幸世さん

たまたま「亀屋博永」の本わらび餅を口にし、その味に深く感動した幸世さんは「わらび餅のつくり方を教えてほしい」と店主に直談判。すると、「亀屋博永」で開かれていた和菓子教室への参加をすすめられます。わらび餅の作り方を教えてもらえる教室ではありませんでしたが、幸世さんはすぐに参加し、急きょお店の接客を手伝うことに。秘書時代に培った対人スキルを生かした幸世さんの丁寧な接客は、店主にも大変好評でした。

奇跡の銅鍋との出会い

今も大切に使っている奇跡の銅鍋

その後、再びわらび餅のつくり方を教えてほしいとお願いすると、今度は「銅鍋を買ってきなさい」という言葉が返ってきます。店主に紹介してもらった道具店で、銅鍋が数十万円もすることに驚き、一度は諦めかけた幸世さん。しかし、たまたま安く売られていた銅鍋を偶然にも手に入れることができました。「おそらく師匠は、銅鍋の値段を見れば私が諦めると思ったのではないでしょうか。銅鍋を持って師匠のところへ行くと、少し驚いた様子でした。この銅鍋は私にとってまさに奇跡の銅鍋です」と幸世さんは当時を振り返ります。

深まる師弟の信頼関係

わらび餅を練る時は「ツラをよく見るように」と師匠から教わったそうです

銅鍋を手に入れ「亀屋博永」に弟子として出入りするようになってからも、すぐにわらび餅づくりを教えてもらえるわけではありません。ひたすら師匠の姿を盗み見しながら、お店の接客に専念する日々が続きます。相手の心に寄り添う幸世さんの接客は、お店の売上に大きく貢献し、師匠夫妻からの厚い信頼にもつながりました。

そんなある日、師匠の不在の際に本わらび餅の在庫がなくなりかけた時、幸世さんが代わりに練るようにと師匠から指示されます。戸惑いながらも、見よう見まねで練り上げた本わらび餅。そのできばえを見た師匠から「きちんと盗んでいたんだな」という嬉しい言葉が返ってきたそうです。

のれん分けに込められた師匠の想い

師匠直筆の屋号と師匠との記念写真(「亀屋博永」前)

弟子となって約5年が経った頃。師匠から店を譲りたいという話が持ちかけられます。しかし、師匠が大切にしてきたお店に他人が入るのは違うと感じた幸世さんは「自分の店が持ちたいです」と申し出ました。その時は「まだわらび餅の習得度が80%だからだめだ」といわれたそうですが、自身の地元である淀で店を出したいという想い、そして実際に淀の街を師匠に見てもらったことで、ついにのれん分けが許されます。自身の名前「幸」が入った屋号も師匠から授けられました。

その時点でも、わらび餅の習得度は完璧ではなかったといいます。それでものれん分けが許された理由を師匠に問うと「わらび餅づくりの感覚はもうつかんでいる。これからは自分の力でわらび餅と向き合うしかない。そしてあとは、お客さんに育ててもらいなさい」という言葉をもらったそうです。

師匠夫妻からプレゼントいただいたのれん

そうして自身のお店をオープンし、師匠の教えを守りながら本わらび餅をつくっていても、試行錯誤の日々だという幸世さん。そんなある日、自分のつくったわらび餅を師匠に届ける機会があったといいます。すると「師匠が泣きながら電話をくれたんです。こんなにおいしいわらび餅は初めて食べたと」。師匠はもちろん、お客さんや周りの人の優しい言葉に支えられ、お店を続けることができていると幸世さんは語ります。

多彩なメニューと未来への挑戦

手前『和三盆入り本わらび餅』奥左『和三盆入り本わらび餅ドリンク(黒糖)』、奥右『淀みたらし団子アイスIN本わらび餅』

「亀屋幸永」では、看板商品の本わらび餅を生かしたアイデアメニューも展開しています。そのひとつが「本わらび餅ドリンク」。今年の春、淀の名所「淀水路の河津桜」を見に来た香港や台湾のお客様にも大変感動いただいたメニューだそうです。

また、予約制で月替わりのわらび餅も販売されています。たとえば…

『レモンの本わらび餅』

●8月限定:オーガニックレモンのパウダーを練り込んだ爽やかな風味の『レモンの本わらび餅』。

『ピーカンナッツの本わらび餅』

●9月限定:煎ったピーカンナッツを混ぜ込んだ『ピーカンナッツの本わらび餅』。珈琲にもぴったりの味わい。

さらに、お店以外の場所での販売も実現しています。阪神梅田本店1階「おやつのひきだし」では月1回の数量限定販売を実施。京都・西陣の福勝寺(通称ひょうたん寺)の節分会では「くるみの本わらび餅」を特別販売しています。今後の夢は海外出店。「海外の人や、海外で暮らす日本人に、和の味を届けたい」と考えています。

師匠の教えと初心を大切につくられる「亀屋幸永」の本わらび餅。それに幸世さんのアイデアが加わった多彩なメニューを、ぜひ一度味わってみてはいかがでしょうか。

■亀屋幸永

https://www.instagram.com/kameyasachinaga/

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