京都・今出川|自転車で届けた幸せを町家でも。「ちーずきっちん」の唯一無二なチーズケーキ

「京都市内に、手作りのチーズケーキを自転車で販売している人がいる」―― そんな噂を耳にしたことはありませんか?

お店の名前は「ちーずきっちん」。店主の黒田千聖(ちさと)さんが自家製チーズケーキを特注の自転車に積み込み、移動販売をスタートさせたのは大学院生の時でした。現在は西陣の京町家に実店舗も構え、新たなファンを増やしています。こうした千聖さんの歩みの原点は、自身の幼少期にありました。

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お菓子作りのきっかけはアレルギー

子ども時代、アレルギー体質により小麦や卵、乳製品を自由に口にすることができなかった千聖さん。そんな娘のため、工夫を凝らしておやつを手作りしてくれた母。その背中を見て育った彼女は、小学生の頃から自らお菓子作りを楽しむようになったといいます。

大学進学を機に地元・香川を離れて京都へ移ると、体質も徐々に改善。その喜びは大きく、それまで食べられなかったチーズケーキも手作りするようになりました。

挑戦したい!ケーキをのせた自転車で古都の街へ

転機が訪れたのは大学院進学後のこと。研究室と自宅を往復するだけの日々に「このまま卒業するのは嫌だ、何かに挑戦したい」という想いが膨らみました。

将来はいつか「カフェをやりたい」と思っていたこと。そして、いつも自分がやりたいことを応援してくれる母からの「好きなようにやりなさい」という言葉に背を押され、1年間の休学を決意。自分が作るお菓子の中でも、特に自信のあったチーズケーキを自らの手で販売してみることにしたのです。

販売スタイルとして選んだのは、日本では珍しい「自転車による移動販売」でした。保健所に問い合わせて営業条件を確認し、基準を満たす自転車の作り手をネットで探し出してコンタクトを取るなど、意欲的に準備を進めます。チーズケーキも試作を繰り返し、友人に試食をお願いしながら、独自のレシピを磨き上げていきました。

買い出しもこの自転車で行くため、スーパーの警備員さんとはすっかり顔なじみに。

こうして2024年6月に始まった、自転車で街を移動しながらの販売スタイル。仕込みで徹夜の日もあれば、夏や冬の厳しい気候に悩まされる日もありました。それでも、自分が作ったものを目の前で食べて、幸せそうな顔を浮かべてくれるお客さんたち。「その表情を見ることが何よりの幸せで、すごく楽しかったんです」。

移動販売で得た確かな充実感。千聖さんは大学院を中退し、チーズケーキ屋として生きる道を選びました。

故郷が引き寄せた、素敵なご縁

移動販売とマルシェへの出店を中心に営業を続ける中、「お客さんにゆっくりと味わってもらえる拠点もほしい」と考えていた頃のこと。千聖さんは、たまたま通りかかった西陣の路地で一軒の八百屋さんを発見します。

1階は野菜たっぷりのお弁当やおかずも販売している八百屋さん「NOKA」。千聖さんの自転車もお店の目印に。

ふと店主に話しかけてみたところ、互いに香川出身であることが判明。すっかり意気投合し、チーズケーキの販売をしていることを伝えると「この2階が空いているよ」と思いがけない提案を受けました。お店を持つなら町家がいいと思っていた千聖さんは、その場で即決。移動販売の開始からわずか1年半余り、2026年1月に「ちーずきっちん」の実店舗が誕生したのです。

八百屋さんの中を通って階段を上がれば「ちーずきっちん」の素敵なカウンター席。
座敷もあり、小さなお子さんと一緒にケーキを楽しんで行かれるお客さんもおられるそうです。

定番から新作まで、通いたくなるラインアップ

看板メニューは、低温の湯煎でじっくり焼き上げ、濃厚な舌触りを実現した『ニューヨークチーズケーキ』。きび糖のやさしい甘み、そして底に敷いた独自配合の自家製サブレが、華やかな余韻を演出します。

営業日には5~6種類のチーズケーキを用意し、持ち帰り・店内飲食の両方に対応。
写真は『ニューヨークチーズケーキ』。取材の時期は旬のいちごも添えて。

また、季節折々のフルーツを1階の八百屋さんから仕入れ、宝石のように閉じ込めたレアチーズケーキ(店舗限定)も人気です。

取材時は、香川産のいちご「さぬきひめ」を使ったレアチーズケーキでした。

「新作は無限に出していきたい」と意欲的な千聖さんは、そのアイデアをお客さんから得ることも多いそう。たとえば、2026年3月に登場した、ケーキを求肥で覆う『桜餅チーズケーキ』(季節・イートイン限定)は、桜スイーツ好きだというお客さんの声から生まれた商品です。

コーヒーは注文を受けてから一杯ずつハンドドリップ。

ドリンクは、チーズケーキに合うと直感した、烏丸御池のスペシャルティコーヒー店「Sentido(センティード)」のブレンドのほか、愛媛のミカンジュースや徳島のすだちを使ったドリンクなど、四国への郷土愛が詰まったメニューも揃います。

愛らしい色形の器は知人の陶芸家にオーダー。

店舗を持ったとはいえ、今後もマルシェへの出店や移動販売は継続していくとのこと。それぞれの営業日は公式SNSをチェックしてみてくださいね。

「チーズケーキといえばここ」と言われる存在へ

開業当初から掲げる目標は「チーズケーキといえばここ」と言われる存在になること。

自転車での移動販売という原点と、京町家の拠点を大切にしながら、いつかは地元・香川の人たちにも自分のケーキを届けたい。また、かつての自分と同じアレルギー体質の方でも安心して食べられるチーズケーキを作りたい。

尽きない夢を描きながらも「その時々の『やりたいこと』を大切に進んでいきたい」という千聖さん。彼女のまっすぐな情熱は、これからも新しい縁を引き寄せながら、多くの人を幸せな笑顔に変えていくはずです。

■ちーずきっちん

https://www.instagram.com/chii.skitchen/

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