京都・岩倉| 旅の途中に訪れたい地域に溶け込む焙煎所、元ホテルスタッフが贈る一杯の安らぎ

「ただいまって言いたくなるね」

ここは、お客さまから思わずそんな声がこぼれるほど、穏やかな時間が流れる小さなコーヒー焙煎所。

「森の隠れ家のような雰囲気にしたかったんです」

そう微笑む店主の志乃さんは、「人々の心にさりげなく寄り添い、誰もが気軽に安らげる場所をつくりたい」という願いを込めて、「Coffee shop POCCHI(こーひーしょっぷ ぽっち)」 をオープンしました。

店内では靴を脱いでスリッパに履き替えるスタイル。自宅にいるようなリラックス感が高まります。
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異業種からの挑戦、理想の場所を目指して

舞台は、京都・洛北の豊かな自然に囲まれた岩倉エリア。志乃さんはかつて、京都市内のホテルに10年以上勤務し、ウエディングプランナーや広報マーケティングに携わってきた経歴の持ち主です。

プランナー時代、新郎新婦の希望に耳を傾ける中で実感したのは「人の想いに寄り添う大切さ」。また、広報として洛北地域の魅力を発信するうちに自身もこの地に魅了され、家族での移住を決意。さらに、育休中に直面したコロナ禍による孤独感も大きな転機となり、「誰もが安らげる場所をつくりたい」「地域に貢献したい」という強い想いを持つようになりました。

当時の志乃さんにとって、コーヒーは「なんとなく好き」という存在。産地や豆の知識は乏しく、本格的なコーヒー店には気後れして入りづらさを感じていたほどだといいます。

それでもコーヒーは、一人でも誰かとでも気軽に楽しめ、日常に安らぎや特別感をもたらしてくれるもの。「コーヒーを通じてお客様に寄り添える場所をつくれば、自分の理想を実現できるかもしれない」。そう感じた志乃さんは、知識ゼロからの焙煎所開業という大きな一歩を踏み出しました。

独学の日々と、背中を押してくれた人々の笑顔

まずは小型の熱風式焙煎機を購入するも、当初は失敗の連続でした。豆を焦がしては部屋中に煙が立ち込め、火災報知器を鳴らしてしまうこともあったといいます。「焙煎を基礎から学びたい」と修行先を探してみても、育児中の身では時間の条件が合わない店ばかり。

それでも「育児を理由に諦めたくない」と、志乃さんはオンライン講座の受講や、焙煎所などを訪ねて直接質問することで、着実に技術を磨いていきました。

店舗は、かつて不動産会社だった建物を改装。2025年秋のオープンを目指して準備を進めていましたが「こんな焙煎所が本当に受け入れられるだろうか」という不安から、開店日を先延ばしにしてしまいます。

そんな志乃さんの背中を押したのは、11月下旬、店の敷地前で試みた「軒先コーヒー」という名のゲリラ販売でした。「オープンを楽しみにしているよ」「このコーヒー、おいしいね」。 立ち寄ってくれた人々の言葉と笑顔に勇気をもらい、2025年12月1日、待望の実店舗をオープンさせました。

小さな焙煎所だからこそできる「おもてなし」

コーヒーは「常に新鮮な状態でお届けしたい」という考えから、最大200gまでの少量焙煎を徹底。15分ほど時間をいただけるようであれば、注文を受けてからその場で豆を焼く「受注焙煎」にも対応しています。

また、店主自身が育休中にカフェインを控えていた際「デカフェの選択肢が少ない」と感じた経験から、そのラインアップも充実。常時30種類ほど揃う生豆のうち、取材時は7種類ものデカフェが用意されていました。

「お客様の好みに合わせたオリジナルブレンドを、その場で焙煎することもできますよ」。一人一人に寄り添う丁寧なサービスは、志乃さんが理想とする「おもてなし」の形といえます。

ドリップバッグや焼き菓子のオーダーメイドギフト、キャスター缶のほか、家族や地域住民の手づくり品も販売

コーヒーのお供に用意している季節替わりのスイーツは、岩倉にあるパンとお菓子の工房「小さなれもんの木」によるもの。イートインすると、清水焼ブランド「TOKINOHA」のカップや、地元の大工さんによる切り株の器で提供され、眺めているだけでも心が和みます。

写真は『3種のディアマンクッキー』(季節によって味が変わります)と、冷めてもおいしい『のんびりぽっちブレンド』。

誰かの心を休める「止まり木」として

オープンから約5か月。

店主との会話を楽しみに訪れるご近所さん、店内がフローリングの安心感から小さなお子さんを連れて立ち寄るお母さん。さらには、豆の香りに誘われたコーヒー好きの小学生がひょっこり顔を出すなど、世代を超えた交流が生まれています。

店名の「POCCHI(ぽっち)」は、店主の息子さんが大切にしているぬいぐるみの名前に由来します。不安な時、いつも息子さんのそばで安心感を与えてくれる、ぬいぐるみの「ぽっち」。このお店も、訪れる人にとってそんな存在でありたい……店名には、そうした願いを込めました。

まさにここは、日々の疲れを癒やし、また元気に羽ばたくための「止まり木」。今日も洛北・岩倉の街には、優しくも香ばしいコーヒーの香りが、訪れる誰かをそっと包み込んでいます。

■Coffee shop POCCHI ~京都洛北 珈琲豆焙煎所~

https://www.instagram.com/coffeeshop_pocchi/

https://pocchicoffee.base.shop/

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