日差しのまぶしい季節。まだ街が静かで涼しい早朝から動き出すこと。それが、まだ見ぬ京都の素顔に出会う秘訣かもしれません。

京都駅や四条河原町からのアクセスも便利な京都市右京区・西院(さいいん)にある「珈琲専門店トゥールビヨン」は、なんと朝6時30分にオープンします。朝早くから動きたい旅人にも、ぜひおすすめしたい喫茶店です。
どこか懐かしい空間は、水道屋さんの元事務所
自動ドアが開くと、奥へと細長い空間が広がります。昔ながらの棚や床(とこ)の間などがそのまま生かされており、どこか懐かしく落ち着いた雰囲気が漂います。

「珈琲専門店トゥールビヨン」を営むのは、前職の時計店で出会ったという鷹取昌吾さんと仁子さんご夫妻。そしてこの建物は、いまも水道屋を営む仁子さんのお父さんから譲り受けた、その元事務所なのです。
10年紡いだ憩いの場、1年の休業を経て再始動
元々、コーヒーに興味があり「いつか喫茶店を開きたい」と考えていた夫の昌吾さんは、前職を退職後にキッチンカーでのコーヒー販売をスタート。その後、「生まれ育った街で何かしたい」と考えていた妻・仁子さんの地元である西院にお店を構えました。

夫婦で切り盛りしながら地域の人に親しまれる憩いの喫茶店となりますが、開店10年目を迎えた2025年6月、お店の移転先を探すことになります。
「場所はやっぱり西院で」と探すものの、なかなか良い物件に巡り合えず、諦めかけていた店主夫妻。すると、祖父母の代から続く水道屋を営む仁子さんのお父さんが、事務所を譲ってくれることになったのです。その建物は、前の店からわずか5メートルほどの場所でした。
物件探しに時間を要したため、約1年の休業を経ての移転オープン。「お客さんは戻ってきてくれないのではないか」という不安もあったというだけに、再開後に来てくれたお客さんから「待ってたよ」と言ってもらえた時は、喜びもひときわ大きかったと昌吾さんは振り返ります。

こだわりが詰まった内装と、三代目の想い
移転先の内装は、主に仁子さんが担当しました。
「この建物は築50年ほどになります。地元の人にとっても街の風景として昔から馴染みのある建物だと思うんです。水道屋から喫茶店へと仕事の中身は変わっても、この場所を受け継いだ三代目として大切にしていきたいです」
そんな仁子さんの想いを体現するように、お店の外観には事務所時代の看板や蛇口のディスプレイ、店内にはすりガラスの棚や昔の時計などを大切に残されています。

また、年配の方はもちろん、ママ友、大学生、会社員と、どの世代の人も気兼ねなくくつろげるよう、席のバリエーションも豊富に揃えています。

たとえば、入り口近くのテーブル席は、仕事の打ち合わせやワークショップにも使いやすいスペース。階段下の押し入れを改装した二人席は「喫茶店でゆっくりこもって、元気になってほしい」という願いを込めて、ビタミンカラーの壁紙を採用しています。
そして11席あるカウンターは、お客さんと同じ目線に立てるようにキッチンの床を一段低くしました。カウンター席はお客さん同士の会話も自然と生まれる場所。「まちの社交場になれたら」という想いが込められています。
進々堂のパンと、手づくりカレーのモーニング
「珈琲専門店トゥールビヨン」は、モーニングからランチ、軽食、バラエティ豊かなドリンクまで、豊富なラインアップが魅力です。
モーニングのラストオーダーは11時で、京都の老舗「進々堂」の食パンを使用したモーニングは3種類。いずれもゆで卵と珈琲(もしくはカフェオレ/紅茶/ジュース)がセットになります。

一番人気は『Cセット』のミックスサンド。半分はマヨネーズであえたゆで卵、もう半分にはハムときゅうりをサンドしています。子どもからご年配の方まで誰もが楽しめるよう、辛子は使わずシンプルに仕上げています。

また、妻の仁子さんが開業当初からつくっている特製『YOME(よめ)カレー』も、朝から味わうことができます。目指したのは「毎日でも食べたい家庭の味」。和牛と定番の野菜に、「数種類の隠し味」を加えるのがおいしさの秘密です。

地元の大学生や会社員、海外旅行者にも評判のロングセラーで、常連さんから「じゃがいも多めで!」とリクエストを受けることもあるそうです。

新メニューや駄菓子など、魅力盛りだくさん
移転前からの名物『ベトナムコーヒー』や、種類豊富なアレンジトーストなどの定番メニューを引き継ぎつつ、移転後にはエビフライを卵でとじた『鎌倉丼』や『メロンソーダ』などの新メニューも加わりました。

さらに店内では「西院で一番安い」という駄菓子も販売しています。学校帰りの小学生がお気に入りのお菓子を選ぶ光景は、いまやお店の日常風景となっています。

京都の素顔に出会う旅を
「店の前の通りにも、昔は3、4軒の喫茶店があったんです。でも今は減ってしまった。だからお客さんに『気軽に行ける喫茶店があって嬉しい!』と喜んでもらえると、『やっていて良かった』と心から思います。これからも地域に根付いた憩いの場であり続けたいです」と、西院愛あふれる仁子さんは微笑みます。

京都観光にお出かけの際は、まず京都の日常に息づく街の喫茶店へ立ち寄ってみませんか。地元の人が憩うどこか懐かしい空間が、旅の始まりに素敵な彩りを添えてくれるはずです。
■珈琲専門店トゥールビヨン
