「まちや」という言葉は平安末期の書物にも残っているようですが、現在の町家の原形は、江戸時代中期に確立したといわれています。そのほとんどは、1864年に起きた「禁門の変」で焼失しますが、明治以降に再建されました。 テレビや雑誌でよく取り上げられている町家の形式は「表屋造り」の町家…いわゆる職住一体のタイプ。とはいえ、町家にはさまざまな種類があり、細部を見渡せばあらゆる違いに気付くことができます。今回は町家の代表的な意匠についてQ&A方式でご紹介しましょう。
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- Q1 鐘馗さんって誰?
- 町家の屋根だけでなく、最近ではマンションの塀などにも飾られている「鐘馗さん」。魔よけの役目を担う彼は、そもそも何者なのか…。それは病に伏した唐の皇帝が見た夢の中でのこと。鐘馗と名乗る大男が小鬼を退治します。鐘馗は科挙の試験に落ち自害した自分を、皇帝が手厚く葬ってくれた恩に報いるため参上したと帝に伝えます。夢から目覚めると帝の病気は完治。そこで皇帝は画家に鐘馗の絵を描かせ、邪気払いの効果があるとしました。この故事が元となり鐘馗さんの信仰がはじまったのです。
- Q2 虫籠窓のひみつ
- 2階にある漆喰のスリット。外から中の様子を見えにくくしつつ風通しをよくする仕組みで、虫かごに似ていることから「虫籠窓(むしこまど)」と呼ばれています。これは「中2階建て」タイプの町家に取り付けられていることが多いもの。江戸時代頃、「庶民は武士を見下ろしてはいけない」ということから庶民が2階に暮らすことを禁止されていたため、町家の2階を物置スペースに見せる工夫だったともいわれています。
- Q3 犬矢来の役目は?
- 町家の代表的意匠ともいえる「犬矢来」。馬が通ったときに跳ねる泥や犬・猫の放尿などから家の壁を守るために設けられたものです。また、必要以上に人を近づけさせない…つまり泥棒を家に入りにくくさせる効果や、家の壁に耳を当てて、中の会話を盗み聞きされないようにする、そんな意味もあったようです。
- Q4 格子で職業が分かる理由
- 「格子を見れば、その家の職業が分かる」というのは、格子の構造が職業の特徴によって変えられているから。その種類も、糸屋格子、米屋格子、染屋格子、炭屋格子など多彩。たとえば「糸屋格子」は繊維関係の仕事の家に採用されていました。糸屋にとって必要な外の光を取り入れるために適した構造だといいます。次に格子を見る時は、なぜこの格子なのか…どんなメリットがあるのか…少し考えてみてもおもしろいかもしれません。
- Q5 小さな庭の有効活用
- 風通しと採光をかねて、家の奥や途中に設けられた小さな庭。少し薄暗い町家の中にぽつぽつと現れる緑の空間は、まるでオアシスのようです。また、灯籠や石を置いたり、花を植えたりと家の人の趣味が反映され、センスを感じる場所でもあります。町家の中の自然は、町家で快適に暮らすための知恵であり、人々の遊び心がつまった場所でもあるのでしょう。